四方山


所長と仕事
デパートなどの屋上のゲームセンターで、なおかつ屋外施設まで持っているというのは、あまり数がないらしい。僕はそんな昨今数少ない屋上でのゲームセンターでアルバイトをしていたのですが、夏場と冬場は本当にしんどかったです。

夏は40度近くに達する中で営業、冬は逆に極寒。夏などは僕は一日外で作業することが多々あって、汗をかくというだけで3kg痩せたりという職場でした。 しかし、エリアのマネージャーなどはそういう厳しい環境だということを知らず、あれをやれ、これをやれといってくるので、我々としては、だったらあんたがやってみろ、と思っていました。

そんな折り、まさにあんたがやってみろ、の状況がやってきたのです。エリアのマネージャー格が一日営業にやって来るというのです。面倒なことも増えますが現場を知ってもらうにはいいチャンスでした。

不幸にも?その日のアルバイトの最古参は僕で、他はほとんど新人さんという状況でしたので、フロアでの所長の相手はなるべく僕がすることに。と、なれば使うこと、使うこと。ダメ出しまで所長にする始末。

外にある乗り物は(本来は室内用です)汚れもひどく一日毎にしっかり拭かないといけませんが、そりゃもう40才を越えた所長が拭き掃除をまともにできるモチベーションを持ち合わせていないのは明らかで、拭いちゃいません。

新人君が「これ拭きましたか?」と聞くから、今日拭いたからもう拭かないんじゃなくて、汚ければいつだって拭くと説明した上で、きれいか汚いか聞いたら「汚いっす」と一言。所長が拭いた乗り物であったのはいうまでもない。

そうして朝の業務が終わり、昼に。炎天下の日中、所長が僕に「ジョーロはあるか?」と聞いてくるので「あります」と答えて満タンにして持っていってあげました。屋外スペースにはプランターに花を植えてあり、それに水をやりたいんだろうなぁと分かっていたのですが、夏場の炎天下、日中に水をやるのはご法度です。根っこが焼けちゃいますから、夕方以降に水をやらないといけません。と知っていて、ひょっとしたら屋外が暑いから水でも撒きたいのかもしれないという1%ほどの可能性も考慮して持っていきました。

するとやはり所長は花に水をやろうとするので「所長、だめです!根っこが焼けちゃいますから」とすかさず答える僕。「なんだよ〜、最初に言ってくれよ〜!」「水を打ちたいのかと思いまして」とニヤッとしながら答えておきました。屋外営業なら当たり前だぜ所長さんよ、とは口が裂けてもいえません。

さらに悪いことは重なります。夕立です。屋外に設置している乗り物類はすべて室内用に作られていますし、濡らす訳には行きません。従って、夕立が来るや否や我々が濡れるのはしょうがないということで、乗り物すべてに即シートをかけて守らねばなりません。

全員びしょ濡れ。しかも、所長は踏ん張ったおかげでズボンのお尻が破けたらしい。踏んだり蹴ったりの所長。常日頃そこで働いている我々はユニフォームの着替えがありますが所長にはありません(なぜか所長は上だけユニフォームを借りて下は私服の迷彩柄のズボンでした)。気を利かせた準社員さんが替えを出そうとしますが断って、ハンカチで拭いてます。破れはつくろえませんが。

夕立ですからザーッと降ってすぐ止んでしまいます。するともう一度シートをはがし、全筐体を拭いて、可動チェックを行った後に再営業を行わないといけません。屋外の辛いところはこれを雨のたびに繰り返さなくてはいけない所です。

子どもたちは雨が上がったので外で遊びたくてウズウズしていますから、汗みどろになりながらシートをダッシュではがして拭き上げます。ところが所長は濡れた筐体の座る部分とコンパネ(操作盤)を軽く拭くのみ。座席が濡れているのにとっとと次のを拭き始めます。

すると新人君が朝の件もあるので、濡れている筐体をまた拭きます。それを見た所長がポツリと一言「拭いたんだけどなぁ」。自分が拭いたのに、よりにもよって新人アルバイターがそれを拭き直ししている姿に酷く傷つけられたのか不満そうにそういいます。これには僕も、新人君も守らねばなりませんが、我々屋外を担当するアルバイターの責務としてビシッと言わねばなりません。

お客様に安全に楽しく遊んでもらうためには、きちんと拭くのは最低限度の事。外側だって寄りかかることもあり、寄りかかったらお客様が濡れてしまう。それを拭かないで営業を再開させることはできない。とかなんとか。要するにあなたはその最低限度もしようとしてない、と伝えたわけです。所長はその後黙々と拭き掃除をして可動チェックを行っておりました。

ようやく仕事も上がりを迎えました。我々はいつものことなので、雨が降ろうが雷が落ちようが日常の事で、大変ではありますが、まぁ日常業務の範囲といえます。しかし、あれやれこれやれといつも言っている所長にとっては、次元の違う仕事だった模様。所長はこの日常業務の上に何かさらにするようにといってきているわけですが、今日の仕事の感想を「結構きついなぁ・・・」と漏らしておりました。もちろん、その後所長があれこれやるように言ってくることはなくなりました。

どこの世界も現場を知らず、上は好き勝手に言ったりするものです。もちろん、やらねばならないことはあるわけですが、人間業ではもう無理、ということもあって、そういうのは今回のように一緒に営業でもしてくれれば良いわけです。できるかできないか、机上の空論でないか、すぐ分かります。少なくとも、現場の状況くらい知った上で指示を出してほしいものです。

この一日はズボンのお尻の部分は破けるし、びしょ濡れになるし、しかもハンカチは忘れて帰っちゃうし(よっぽど疲れたのかすぐに帰ってしまいました)、現場の状況を知ることもでき、所長にとって大いに得るところの多い一日となったようでした!

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